俺にとっての音楽

俺にとって音楽は、自分を表現する為の武器だった。

 

だから音楽はあくまで自分で創り出すもの。

 

もちろん音楽を聴いて感動する時はいっぱいあるけど、俺はどこかで線を引いてた。

 

「所詮は音楽だから依存してはいけない」と。

 

今思えば俺は、意外に音楽とドライに付き合って来たんだなと思う。

 

そう、俺は臆病なパンダだったんだ。

 

というのも、まぁこんな俺にだってたまには嫌な事があってだな。

 

そんな時はただただ残念で寂しい。

 

どうにも未来が閉ざされたようにしか思えない。

 

誰が悪いワケでもないから、怒りにも変えられない。

 

そんなやり場のない気持ちに押しつぶされそうだったんだ。

 

 

そんなヤケクソな気分の時にLIVEハウスに行ったら、目の覚めるようなスゲェ音楽が鳴ってたんだ。

 

熱くて、激しくて、悲しくて、切なくて。

 

なのにまるで、お母さんパンダの胎内にいるかのような優しい空間だった。

 

だから俺は思い切って、その音楽を頼ってみようと思った。

 

今日はいろいろ考えるのを止めて、思いの丈をぶちまけようと思った。

 

そしてもちろん一瞬ではあるけれど、自分の人生を委ねてみようと思った。

 

 

そしたらその日は見えたんだ、なんか変なスイッチが。

 

いつもだったらそんなスイッチは絶対に押さなかった。

 

でも、もう頭の中がコンガラかってヤケクソだったんだ。

 

もう、嫌なことから逃げ出したかったんだ。

 

だから俺は、迷わずそのスイッチをこの手で押した。

 

すると「カチッ」という音がして、パっと新しい扉が開いた。

 

 

気が付くと、いつの間に大観衆はどこかに消え、そこには俺と音楽しかなかった。

 

頭の上をびゅうびゅうと吹いてた黒い風も、俺が倒れるのを今か今かと狙ってるハイエナも今は見当たらない。

 

その代りに音楽がいた。

 

そして張りつめた糸のような俺を、あっと言う間に呑みこみやがった。

 

俺はそれに従った。

 

 

その瞬間、俺は初めて理解した。

 

「なるほど、ライブハウスに群がるバカな人間どもは、こういう風に音楽と接してやがったのか」ってな。

 

それは俺の人生の中で初めての、音楽との接し方だった。

 

 

 

俺の人生は、俺が歩いた分しか進まねぇ。

 

チャンスはくれても、誰も助けちゃくれねぇ。

 

誰かの言う事を行儀よく聞いたって、そいつが幸せにしてくれるわけでもねぇ。

 

テメェ、よくも無責任なデタラメばかり偉そうに言えたもんだな!コノヤロウ!

 

どうせこの世にある自分以外のものは全てクソだ!

 

信じれるのは自分だけだ!

 

 

 

…そう思って生きて来た。

 

その考えは今も変わらない。

 

俺の人生は、俺にしか進められない。

 

 

だけどその瞬間、俺は自分の人生を完全に音楽に委ねたんだ。

 

例え一瞬でも、自分の人生を委ねられるものがこの世にあるとしたら、

 

たとえ一瞬でも、一人じゃ抱えきれない荷物から解放してくれる空間があるとしたら。

 

…そら、辞められるわけねぇわな。

 

 

そして俺にとってそれが、音楽だったって今さら気づいたわけよ。

 

だからお前ら人間どもの貧相な人生を、一瞬でも良いから委ねてもらえるような、そんな音楽を作りてぇ!

 

そんなすげぇバンドになりてぇ!!

 

 

そう思ったのは、内緒の話だ、バカヤロー。

 

こんな無駄に長ぇ文章を最後まで読んでる暇があったら、自分の人生進めやがれ、このクソヤローが。

 

 

今はまだお前の事を助けてやれねーよ、今はまだ。